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「ことば」と「音」で遊ぼう! <小学生と学ぶ超言語学入門> 第1回 言語学者、母校に帰る

川原繁人

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Illustration ryuku

<今回の質問>
「言葉って何がおもしろいの?」 4年生・らん

アメリカに留学しました

 カリフォルニア大学はどこだかわかるかな? これはアメリカの地図ね。アメリカって広くて、西と真ん中と東に分かれてるんだけど、交換留学のときは西海岸にあるカリフォルニアっていうところに行きました。カリフォルニアの中のサンタクルーズってところにある大学ね。

―― サンタクルーズ。

川原 知ってる? サンタクルーズ。

―― 知らない。

川原 知らないよね。ビーチが近くにあって、サーフィンの聖地としても有名な場所です。ここでの生活と勉強が楽しかったんですよ。まず、英語で話すのが楽しかった。この写真見て。一番右の女の子は中国系アメリカ人でね、みんなで手作りギョーザパーティーをしています。日本語を勉強している子に私が日本語を教えて、その友だちがお返しに私に英語を教えてくれました。この写真に写っている友だちは、今でもLINEのグループもあったりして、大事な友だち。

アメリカの友人たちと手作りギョーザパーティー
友だちと一緒にギター片手にビーチで言語学を語る

 こっちの写真はビーチなの。ビーチに寝そべって、奥にギターがあるでしょう? 彼がギター弾きながらお勉強の話しをするの。「今日の授業のあれってああだよね」って感じで。ほんと幸せだった、このとき。勉強って教室で机に座ってするものだけじゃなくて、もっと自由なものなんだな、って感じたね。研究者になった今でも、勉強は机の前でするものだけじゃないって感じています。友だちや学生と語り合っている時の方が学ぶことが多かったりね。

 あとは、サンタクルーズの授業では、何かを教えられるっていうより、「自分で考えてみなさい。先生と一緒に言語について考えましょう」っていう雰囲気だった。実際に、先生から「ここは言語学を学ぶところではありません。言語学をやるところです」って言われた。これも私の性に合っていたみたい。

 それで、日本にいるよりはアメリカで伸び伸びと勉強したほうがいいなと思ったんだよね。ICUは卒業しなければいけないから一回日本に帰ってきて、卒業するだけして、次は大学院というところに行きました。大学院っていうのは、大学の勉強だけでは足りないから、もうちょっと勉強したい人や自分で研究してみたい人が行くところ。それなら思う存分勉強できるアメリカに行こうとなって、今度は、東海岸に行きました。こっちの地図を見てみようか。東海岸のマサチューセッツというところ。北のほうで寒いところでしたよ。ここで5年間勉強して博士号というのを取得しました。

 博士号というのは、研究者になっていいよ、これがあれば一人前の研究者ですよっていう証です。それから大学で教えていいですよっていう資格でもある。アメリカでの勉強は楽しかったけど、生活とか食べものは、アメリカより日本のものが好きだったからね、5年間頑張ったし「卒業したら日本に帰ってくるぞ」って思ってました。でも、大学院の恩師に「繁人なら最先端の研究をしているアメリカの大学でやっていける」ってそそのかされて(笑)「じゃあ、やってみようかな」って、アメリカの大学の先生になっちゃいました。27歳の頃です。

 私は音声学といって「ことばの音の研究」をしてるんだけど、その大学では学生たちに音声分析のやり方とかを教えながら、新しい実験室も立ち上げました。アメリカの大学では言語聴覚士っていう「言葉のお医者さん」を目指している学生が多くてね、そんな学生たちと実験室で研究していました。その時の写真がこちら。仲よさそうでしょう? それで2013年に、そろそろいいかな、アメリカも疲れたなっていうころに慶應が「うちの大学に来ませんか?」と言ってくださったので日本に帰ってきました。

アメリカのラトガーズ大学にて音声研究所を立ち上げる
音声研究所の学生たちと。今ではことばのお医者さんとして活躍中。

 今は慶應義塾大学の言語文化研究所というところにいます。専門は言語学、その中でも特に音声学というものをやっています。こんなの聞いたことないでしょう? 今日は言語学や音声学が何をやっているのかを紹介していくんだけど、簡単に言うと、言語学はことばを研究する学問。音声学というのは、ことばの中でも声に関する学問。

川原繁人(かわはら しげと)

1980年生まれ。慶應義塾大学言語文化研究所教授。 カリフォルニア大学言語学科名誉卒業生。 2007年、マサチューセッツ大学にて博士号(言語学)を取得。 ジョージア大学助教授、ラトガース大学助教授を経て帰国。 専門は音声学・音韻論・一般言語学。 『フリースタイル言語学』(大和書房)、『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む』(朝日出版社)等、著書多数。

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